コーダの私がコーダ視点で観た映画『コーダ あいのうた』(2022)を語る

カルチャー

先日、1月公開の映画『コーダ あいのうた』を観てきました。

本作は、家族の中でたった一人だけ”耳が聴こえる”主人公が夢と現実に葛藤する…そんなお話。

良い作品だったので「色んな方に観て欲しいな」という気持ちと、「コーダだからこそ伝えられる事があるかも」という想いから本作についての所感を綴っていこうと思います。

あらすじ

豊かな自然に恵まれた海の町で暮らす高校生のルビーは、両親と兄の4人家族の中で一人だけ耳が聴こえる。陽気で優しい家族のために、ルビーは幼い頃から“通訳”となり、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、秘かに憧れるクラスメイトのマイルズと同じ合唱クラブを選択するルビー。すると、顧問の先生がルビーの歌の才能に気づき、都会の名門音楽大学の受験を強く勧める。だが、ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられず、家業の方が大事だと大反対。悩んだルビーは夢よりも家族の助けを続けることを選ぶと決めるが、思いがけない方法で娘の才能に気づいた父は、意外な決意をし・・・。

https://gaga.ne.jp/coda/

コーダとは

まず「コーダ」という言葉自体、初めて聞いたという方が多いかもしれません。

コーダ(Children oDeaf Adult/s)とは、きこえない・きこえにくい親をもつきこえる子どものことを指す。両親ともきこえなくても、どちらか一方の親だけがきこえなくても、また親がろう者でも難聴者でも、きこえる子どもはコーダとされる。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%80_(%E8%81%B4%E8%80%85)

当事者である私ですら、ここ数年で知った言葉でした。

私の家庭では両親共に耳が不自由なため、幼い頃から両親の耳としてサポートをする生活を送ってきました。口を大きく、ゆっくりと動かすことで口話での会話も可能ですが、やはり手話での会話が1番スムーズ。そのため、物心ついた頃から手話を使った会話をしていました。

コーダの苦悩や葛藤

作中では過去に「発音が変」だとからかわれた事が原因で、人前で歌うことに抵抗を感じていた主人公。似たような環境で育ってきた私がとても共感した場面です。人に言葉の間違いを指摘される度に、耳から得る情報量の大きさに毎回気付かされるのでした。

そういった他の家庭との違いを知り、経験していく中で生まれる「劣等感」や「コンプレックス」はコーダの誰もが抱える問題なのだなぁと少し納得しました。

ヤングケアラーとして生活してきたコーダの中には、やり場のない苦しみだったり「やらねば」というプレッシャーに悩む人が多いと思います。コーダ自身は聴こえるし看過されがちなのですが、コーダにも相応のケアが必要なのかもしれませんね。(とはいえ私自身、他者に干渉されるのは苦手なので複雑な問題ですけれど)

他にも「通訳だけに留まらない生活全般のサポート」や「家族の生活音に耐えられずイヤホンで耳を塞いでしまう」など、あるあるが過ぎるエピソードの数々…。自分と重なる場面が多々あり、面白いだけでなく「もっと色んな家庭のコーダについて知りたい!」と興味が湧きました。

聴こえないってこういう事なのか

そんな主人公の「コーダの苦悩や葛藤」を描いただけでなく、この作品を観ている観客が、ろう者である家族の視点になって観られる場面もあったりします。普段何気なく聞いている環境音や音楽が、もしも突然全て無音になったら…考えるだけでも恐ろしいですよね。そんな「ハッ」とさせられるような演出に拍手を送りたくなりました。

主人公を演じるエミリア・ジョーンズさんの歌声の素晴らしさもさることながら、家族を演じた3人のろう者の役者さんの手話の演技も見ものです。アメリカ式の手話は全く未知の世界でしたが、表情・表現の豊かさには共通するものがあり、何度もグッと惹きつけられました。

あと、個人的には音楽もすごく良かったです。主人公が1番の見せ場で歌う、ジョニ・ミッチェルの「Both Sides Now」は観たあと数日はずっと頭の中で流れていました。作品の内容と歌詞がマッチしていて、この映画にぴったりな選曲でした。

…と、コーダ視点で『コーダ あいのうた』について語ってみました。まとまりがなくなってきそうなので、ここまで。

あらためて、人同士が理解し合うのは家族でも大変難しいこと。だけど、理解しようとする姿勢・努力は大切だなぁ…としみじみ考えさせられました。

コーダはみんなが楽しめる作品だと思います

今回は、聴こえる世界と聴こえない世界の両方を知っているコーダだからこそ色んな方に知ってもらいたいなと思い、本作を取り上げてみました。

私が観に行った劇場では、手話で会話しているお客さんをチラホラ見かけました。聴こえる人も聴こえない人も、そしてコーダの方が観ても楽しめる作品だと思います!

気になった方はぜひ。

映画『Coda コーダ あいのうた』公式サイト

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